「チリン、チリン」と風鈴の音が響くホームに降り立った。風に揺れる短冊には「後藤新平生誕150年」「平泉文化、世界遺産へ」の文字も見える。奥州市水沢区は偉人のまち、鋳物のまちだ。 |
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 駅前通りを右に折れ、大町川沿いを歩くと、めがね橋(長光寺橋)に出合った。水沢城の外濠だった川の両岸には樹齢100年を超えるケヤキ並木が続き、古い家並みや蔵、橋が一体となった景観は城下町の風情を伝える。
優れた先人を輩出してきた水沢には、その功績を顕彰する記念館が数多くある。その一つ、後藤新平記念館に足を運んだ。同館には東京市長、内務大臣などを歴任し「大風呂敷」の異名をとった先見の政治家・新平の業績と人柄を伝える資料が並んでいる。及川正昭館長(63)は「好奇心旺盛で茶目っ気たっぷりだった新平の、既成概念にとらわれないものの見方を感じ取ってほしい」と話す。記念館から歩いて5分ほどの後藤新平旧宅には、いたずらをした新平が母親に縛られ放り込まれたという小屋があり、何だかほほえましい。 |
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水沢の街を歩いていると、いたるところで鋳物のモニュメントや街路灯を見つけることができる。その鋳物製造の中心地・羽田町にある工房の一つ「南部成龍堂」を訪れた。父親の跡を継ぐ及川光正さん(38)が手掛けるのは鉄瓶や茶釜といった南部鉄器の工芸品だ。東京でのサラリーマン生活を経て水沢に戻り9年、型づくりから着色までこなす。「まだまだ半人前」と言いながらも「手作り感が伝わるのが南部鉄器の魅力。丁寧に手間をかけ、きらびやかな
雰囲気を持つ作品を作っていきたい」と熱く夢を語る。 |
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昼食には前沢牛を選んだ。まずは日本でも珍しい、牛をテーマにした前沢区の「牛の博物館」を見学。事前学習を終え訪れたレストラン「味心」は、約800頭もの黒毛和牛を飼育する小形牧場の直営店だ。鮮やかな霜降りのサーロインステーキをわさび
醤油でいただく。柔らかな肉のうま味とサシの甘みが舌の上で溶けて混じり合う、至福の食感を堪能した。前沢牛オガタ総本店専務取締役の村上幸男さん(46)は「小形牧場の牛はサシの入り方のバランスがいいんです。サシに臭みがなく、さらっとしているのも特徴です」と胸を張る。 |
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再び水沢に戻り、古刹・黒石寺から1年前に「平成の大改修」を終えた正法寺へと足を向けた。蛇紋岩の石段を踏み惣門をくぐると、日本一の茅葺き屋根を誇る本堂が姿を現した。側面妻壁にある意匠を凝らした笈形(おいがた)にも目を奪われた。本堂に入ると修行僧とすれ違い、
思わず背筋が伸びる。事前に申し込むと禅修業体験ができるという。
歴史と伝統が息づく街は、落ち着いたたたずまいと、人々の穏やかな笑顔で旅行者を優しく包んでくれた。 |
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