| 岩手山を望みながら車体がホームに滑り込む。ここは、盛岡。城下町のたたずまいを残し、川と緑の豊かさが印象的な街だ。駅舎の壁面には、石川啄木による「もりおか」の文字。「ようこそ、おでんした」―。郷土の歌人に迎えられ、旅を始めた。 |
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 市内中心部を流れる中津川沿いにも盛岡ならではの光景が広がる。「もりおか啄木・賢治青春館」は、ロマネスク風の近代洋風建築。周辺には赤レンガ造りの銀行や古い商家、南部鉄器工房などがあり、レトロな雰囲気が町並みにしっくりととけ込んでいる。
昭和天皇のご成婚を記念して1927年に建てられた県公会堂。地階にあるフランス料理レストラン「公会堂多賀」は創業80周年を迎えた。看板メニューはハヤシライス(1050円)。「1週間以上じっくりと煮詰めたデミグラスソースが、おいしさのベースなんですよ」と三代目の細川磐夫さん(71)が胸を張る。 |
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岩手山のふもとに広がる小岩井農場へ足を延ばそう。「まきば園」で羊と戯れ、農場内の知られざるスポットを巡るウオーキングツアーに参加。鳥のさえずりを聞きながら軟らかな土を踏む。クマイチゴの赤い実は、やさしい甘さ。少女時代に戻ったように心が弾む。
116年を数える農場の歴史を見つめてきた建築群も見どころだ。本部事務所や四階倉庫、天然冷蔵庫など9棟が国の登録有形文化財となっている。案内してくれた展示資料館長の野沢裕美さん(35)は、小岩井に生まれ育った女性。“わが家”への誇りが、笑顔と言葉にあふれていた。 |
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 NHKドラマ「どんど晴れ」に登場する小岩井農場の一本桜を背に、盛岡の奥座敷・つなぎ温泉に向かった。「四季亭」では、遠く沖縄からもロケ地巡りの宿泊客を迎えたという。女将の林晶子さん(55)は「旅行する一人一人に、それぞれのドラマがあります。その思いを、私たちは大切にしたいんです」と、おもてなしの心を
語った。
歴史と文化が織り成す街は、歩くほど、人と出会うほどに、不思議と懐かしさを増す。時の流れをゆったりと感じられる喜びに満ちた旅路となった。 |
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