「キッポーッ」。甲高く響く汽笛の音が心地よい。小気味いい蒸気音とともに水田地帯をSLが走る。北東北デスティネーションキャンペーンに合わせて記念運行されたD51形蒸気機関車に乗り北上へと向かった。 |
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北上は鬼の街だ。市民憲章には「あの高嶺 鬼すむ誇り」とうたわれている。北上駅では鬼剣舞をモチーフにした、利根山光人作のダイナミックな壁画が旅行者を出迎えてくれる。駅前にある「おでんせプラザぐろーぶ」
に立ち寄ると、1階の観光物産館では北上のさまざまな特産品とともに鬼剣舞面も並べられていた。
ふと足を止め見入ってしまう不思議な魅力がある。装飾や実用のほか厄除けとしても人気が高いという。 |
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北上駅の東側、北上川河畔に広がる展勝地の桜並木は東北有数の桜の名所として知られる。
展勝地内には29棟の古民家や武家屋敷、竪穴式住居などが移築・復元されているみちのく民俗村がある。
ここでガイドボランティアを長年務めている菊池千代さん(73)は「全国から訪れる方々との会話が楽しいんです。こちらが一方的に説明するのではなく、コミュニケーションを大切にしています」と笑顔で話す。かつてはバスガイドだったというだけあり、リズム感ある軟らかな語り口で、めくるめく時間旅行へといざなってくれた。 |
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北上の新たな名物として売り出し中なのが「北上コロッケ」だ。このコロッケは「北上ならではの料理を」と、調理師会、青年会議所のメンバーが協力して考案したもので、レストランなど市内約10店舗で1年ほど前から提供している。
明治29年創業の老舗料亭「大安楼」のメニューに並ぶのは「コロッケ丼」と「コロッケサンド」。ジャガイモの代わりに使った地元産の二子芋、きたかみ牛、アスパラが独特の食感と絶妙な味わいを作り出している。同店5代目・高橋宏尚さん(38)の「料理には伝統と革新が必要。お客さまの五感に訴えるものを提供していきたい」との口調はとても熱い。
郊外へと足を延ばし、世界各地の鬼に関する資料を展示する「鬼の館」を訪ねた。展示室に足を踏み入れた途端、逢魔時の異界が広がる。そこに並べられているのは鬼の面、面、面…。同館の鈴木明美上席主任学芸員(56)は「鬼は本来、怖い心と優しい心の2つを併せ持つ存在。それは人間そのものでもあるのです。ぜひ当館に足を運び、鬼の本当の姿を知ってください」と話す。 |
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県道夏油温泉―江釣子線を進み秘湯・夏油温泉を目指す。「いで湯ライン」と名付けられたこの県道沿いには10軒の温泉施設や
スキー場が並ぶ。つづら折りの道に覆いかぶさるように枝を伸ばす
ブナ林の樹影が途切れたところが目的地だ。旅の思い出に浸りながら川沿いに点在する6つの露天風呂を満喫した。焼石岳から流れ出る川のせせらぎが耳に優しい。山の木々は、そこに住む鬼の姿を隠すかのようにうっそうと茂り、深緑の葉を揺らしていた。
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